2019年に産声を上げた本誌は、自身も慢性疾患を抱えるOlivia Springが編集・発行人を務める雑誌であり、居場所でもある。Oliviaは、慢性疾患患者として“普通に”働くことの難しさに長年悩んでおり、自身のプロジェクトで自分が働きたいと思える環境をつくりたいとの思いから本誌を創刊させた。世界中からの寄稿で構成した本誌は、デザイナーも含めて携わる全員がなんらかの疾患や障害と付き合っている。障害や病と向き合う姿を紹介する雑誌は他にも複数あるが、終始当事者自身が生の声を発している点で世界的にみても珍しい。
23名のエッセイや詩、インタビュー、アートワークなどが掲載された今号から、Oliviaによるエディターズレターとエッセイ、対話と3つの詩を日本語訳し、ブックレットとしてまとめた。翻訳とブックレットデザインはこれまで同様きくちゆみこさんにお願いした。
1つ目のエッセイは、新型コロナウイルスの後遺症であるロング・コビットを患った著者の「病の時間」についての話。不安な状況にさらに拍車をかけているというインスタグラムのリールを挙げながら、捉えどころのない時間について綴る。2つ目は、本誌デザイナーのKaiya Waereaとその友人による対話。「治療」という名目で自分たちを矯正しようとしてくるシステムなどによって互いが感じている疎外体験について語る。
Oliviaはエディターズレターで、自身を何年も苦しめている強迫観念について打ち明けながら、「自信を失くしたり、挫折に直面したりしたとき、みなさんがこの雑誌を読み、支え、寄稿し続けてくれているという事実が、ただ有意義であるばかりでなく、私に大きな安心を与えてくれる」と感謝を表す。本誌は創刊以来100名の当事者の声を掲載し、11カ国で販売してきた。コミュニティが広がることにより救われる方も、きっともっと増えるだろうと思う。
一人一人の障害も病も悩みも当然ながら違い、他者のことを完璧に理解することはとても難しいことだと思う。けれども、理解しようとすることは誰にでもできるはずだ。相手と向き合い対話を重ねることで、誰もが互いを認め合える世の中に変わっていくことを心より願っている。
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