今までありそうでなかった、昭和生まれの小規模な地下街に焦点を当てたシリーズ完結編。ようこそ、地下街の世界へ。
2016年、当時大学生だったTowersさんが金沢市片町にある「ブラザービル地下街」へと誘う魅惑的な看板に出会ったことからすべては始まった。それまでは広く明るい地下街しか知らなかったTowersさんにとって、そこで目にした光景は一瞬にして焼き付き、衝撃と興奮を忘れることはないという。
雑誌名の『地下街への招待』とは、小規模な地下街のみに共通する、地下街へ誘い込むための仕掛けとのこと。地下街へと誘う下向き矢印と看板、空間演出の要素を「吸引力」と独自に定義し、星で示す。「超主観的な指標」とTowersさんは話すが、地下街になじみのない私のような者にとっては観賞のポイントを知れる面白さがある。豊富な写真と店でじっくりと聞いた話を盛り込んだ文章は、観察力の賜物だろう。
今回は44箇所の掲載のうち、10箇所が北海道内の地下街。私も訪れたことのある街が複数あったものの存在すら気づいていなく、知るきっかけができたことをうれしく思う。特集は老朽化などを理由に2023年9月に閉鎖した、神戸市の元町有楽名店街。各店の店構えをずらっと並べた写真は圧巻。
地下街に限らず、いつかなくなってしまうものをこちらから止めることは難しい。であれば、なくなる前に足を運び、愛でておきたいと強く思う。
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※著者のTowersさんを取材させてもらった記事がこちらから読めますので、ご興味お持ちくださった方はどうぞ