2016年、当時大学生だった著者のTowersさんが金沢市片町にある「ブラザービル地下街」へと誘う魅惑的な看板に出会ったことからすべては始まった。それまでは広く明るい地下街しか知らなかったTowersさんにとって、そこで目にした光景は一瞬にして焼き付き、衝撃と興奮を忘れることはないという。
雑誌名の『地下街への招待』とは、小規模な地下街のみに共通する、地下街へ誘い込むための仕掛けとのこと。地下街へと誘う下向き矢印と看板、空間演出の要素を「吸引力」と独自に定義し、星で示す。「超主観的な指標」とTowersさんは話すが、地下街になじみのない私のような者にとっては観賞のポイントを知れる面白さがある。豊富な写真と店でじっくりと聞いた話を盛り込んだ文章は、観察力の賜物だろう。
今回は、主に本州の地下街を紹介。現存しない場所も含め、22箇所を厳選。特集の金沢都ホテル地下街は2017年に閉館しているが、閉館前に何度も足を運び、話を聞き続けた。本書を出版後、金沢都ホテル地下街で両親が働いていたという読者から感謝の言葉が届いたという。記録されることがいかに重要であるかを物語るエピソードだ。「近い将来、消えてなくなってしまうかもしれないものを写真と文章で残し続けたい」とTowersさんは話す。
普段は会社員として働くTowersさんにとって、初めての著書。ストレートに地下街への愛がひしひしと伝わり、プロには表現できないような研ぎ澄まされていない魅力が本書にはある。昭和らしさを随所に盛り込んだ、芸の細かさが光るデザインにも注目。
ぜひあなたも、騙されたと思って地下街へ迷い込んでみてほしい。
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※著者のTowersさんを取材させてもらった記事がこちらから読めますので、ご興味お持ちくださった方はどうぞ