障害や病には害のある固定観念がつきものではないだろうか。あなたにとっての当たり前は、誰かにとってはとても有難いことかもしれない。つねにそうした想像ができる人でありたいと私は思う。
2019年に産声を上げた『SICK』は、自身も慢性疾患を抱える、Olivia Springが発行人を務める雑誌であり、居場所でもある。Oliviaは、慢性疾患患者として“普通に”働くことの難しさに長年悩んでいたという。自分のプロジェクトで、まずは自分が働きたいと思える環境をつくりたいとの思いから本誌を創刊させた。コントリビューターもデザイナーも全員がなんらかの疾患や障害を抱えている。
前号はZINEのようなミニマムな体裁だったが、今号は背表紙が付きボリュームが大幅にアップ。公募で決まる掲載作品は世界中から集まり、約20名がエッセイや詩、アートワークを寄せる。創作活動をする空間として捉えているベッドについてのエッセイ、『Crippled: Austerity and the Demonization of Disabled People』(緊縮政策による障害者権利の危機)のレビューや孤独についての考察、義足のタトゥーアーティストへのインタビューなどが淡いピンクの紙の上に綴られる。
病は目に見えず言葉を持たないからこそ、当事者自身が声を露わにできる場所の重要性を感じる。まずは相手を知ることから始めたい。障害がある・ないに関わらず、互いが互いを理解し、認め合える世の中になること。その一歩として、本誌の果たす役割は大きいはずだ。
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