本誌が創刊した2016年頃は食をテーマとした雑誌の刊行が世界中で相次ぎ、一大ムーブメントを巻き起こしていたといっても過言ではない。その中で、ファッションやアート、デザイン、時には食糧問題までをも軽やかに横断しながら食文化を発信する唯一無二の存在であるのが『RiCE』だ。
牛肉の未来と題した今号。普段なにげなく食べている牛肉の品種についてや牛に与える餌、育て方についてなどの日本と世界の牛肉事情を序章として、アニマルウェルフェア(家畜福祉)や和牛についてを国内外の様々な観点から紹介するコンテンツを、食のジャーナリストや生産者、料理人の視点で探る。こう聞くと一見難しいように感じるかもしれない。けれど、カラフルな誌面とビジュアルであっという間にその世界に引き込まれてしまうから不思議だ。
創刊号から続く豪華な面々による連載も魅力の一つだが、根本宗子さんによる「美味しいお芝居」では、アポロチョコレートとメントスが登場。シリアスな食糧事情についてとワンコインのお菓子が並列する編集が『RiCE』の素晴らしさだと思う。今号より、コンテンツ紹介ページに「Appetizers」「Aperitif」「Main Dishes」「Side Dishes」「Desserts」と表記されるようになった。1冊をまるで1つのコース料理と捉えるコンテンツのつくり方がユニークだ。
タイトルロゴの“R”をよく見ると米粒を象っているという、芸の細かさにも脱帽。日英バイリンガル。
※前号のクラフトビール特集は、こちらからどうぞ
※WWD JAPAN.comでの連載第9回目で紹介しました