“街と山のあいだ”というコンセプトのもと、2007年の創刊以来ひっそりと丁寧に編まれ続ける小冊子。過去には折りたたむ形態をとった号もあるが、冊子自体の大きさはずっと変わることがなく、散歩のお供に持ち歩きたくなるような絶妙なサイズ感がたまらなく愛おしい。
編集・発行人の若菜晃子さんは、山と渓谷社で編集者として15年間勤務した後に独立した、言わば山のプロ。そんなバックグラウンドと若菜さんのお人柄がにじみ出ているような優しく丁寧な文体が混ざり合い、毎号山や自然の魅力をそっと教えてくれながら寄り添ってくれるような存在だ。
今号の特集は、葉で包む。日本各地に根付く葉で包まれるお餅やおすしからその地のルーツを辿る。エッセイとイラストで紹介される、包む葉の種類の多さにも驚くが、“伝統とは作られるものではなく、自然と生まれるものなのだ”という若菜さんの気づきにハッとさせられる。そんな心に留めておきたい一文に毎号出合えることが、本誌を読む楽しみでもある。タイトルが印刷されている表紙をめくるとコンセプトのメッセージが表れ、ページ数の表記には山のような記号がついている。そのさりげなさも魅力だ。
山に囲まれた街が好きなのだと、私の記憶の糸をたぐり寄せ思い出させてくれたのは『murren』だと、今になってふと気づく。
※バックナンバーはご用意可能な号もありますので、ご興味をお持ちくださった方はお気軽にお問い合わせください